「個人事業主はどのタイミングで法人化すればいい?」
「法人化の手続き方法は?」
「法人化するとどんなメリットがある?」
このような疑問を抱えていないでしょうか。
個人事業主として売上が増加すると、法人化を検討するタイミングです。
しかし個人事業主からの法人化は、タイミングを間違うと損することになりかねないので、慎重に行う必要があります。
そこでこの記事では、個人事業主からの法人化について詳しく解説します。読み進めることで、以下のメリットを得られます。
- 個人事業主と法人の違いが分かる
- 法人化を検討するタイミングについて知れる
- 法人化の手続き方法を把握できる
個人事業主からの法人化について知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
個人事業主と法人の違いをサクッと30秒で解説
個人事業主と法人の違いについて、以下の表にまとめました。
個人事業主 | 法人 | |
費用 | 無料 | 約20〜25万円が必要 |
支払う税金の種類 | ・所得税 ・個人住民税 ・消費税 ・個人事業税 |
・法人税 ・法人住民税 ・法人事業税 ・消費税 など |
経費計上 | 事業に必要なものは計上可能 | 自分の給与や退職金も経費にできる |
赤字を繰り越せる期間 | 3年(青色申告) | 10年 |
社会的信用 | 低い | 高い |
確定申告の方法 | 個人の確定申告 | 法人の決算 |
生命保険料・社会保険料 | 所得控除のみ | 全額か2分の1を経費にできる |
上記のような違いがあり、個人事業主よりも法人の方がメリットとなるものが多いです。
法人化するには条件がありますが、可能なのであれば法人化するのが事業を行う上で有効です。
個人事業主が法人化を検討するタイミング3つ
個人事業主が法人化するにあたって、どのタイミングがいいか迷うことが多いです。
個人事業主は、以下のタイミングで法人化を検討するのが有効です。
- 個人事業主としての売上が1,000万円を超えた時
- 事業拡大で銀行の融資を受けたい時
順番に見ていきましょう。
1. 個人事業主としての売上が1,000万円を超えた時
売上が1,000万円を超えたなら、法人化を検討すべきタイミングです。
個人事業主は、売上1,000万円以上だと消費税の納税義務が発生するためです。
ただ、個人事業主が法人化すると、最初の2年間は消費税の納税が免除されます。
そのため、売上に対して発生した消費税の納税をなくせ、節税につながります。
法人は個人事業主とは別の分類なので、過去の売上が影響しないのです。
売上が1,000万円を超えたら、節税のため法人化を検討しましょう。
2. 事業拡大で銀行の融資を受けたい時
事業拡大で銀行の融資を受けたいなら、法人化が有効です。
個人事業主は社会的信用が低いので、銀行に融資をお願いしても審査に通ることは少ないです。
しかし、法人化していれば社会的信用が高いので、銀行の融資を受けられる可能性があります。
事業拡大には設備投資や人材確保など、多くの資金が必要です。
銀行からの融資を受けられれば、金銭的な問題をなくし事業拡大を目指せます。
3. 課税所得が増えた時
課税所得が増えた場合は、法人化することで節税につながります。これは個人事業主と法人で、課税所得にかかる税率が異なることが要因です。
個人事業主は、所得が上がるほど課税額が上がっていく仕組みです。
一方法人は800万円以上の所得は、一律で23.3%の税率です。
個人事業主の税率は、695万円以上900万円未満は23%で、900万円以上1800万円未満だと33%です。
つまり所得が900万円以上であれば、法人化した方が節税になります。
ただ、所得税率は、事業主の年齢や家族構成によっても変わります。
所得900万円以上はあくまで目安とし、正確なタイミングは税理士などの専門家に相談するのが有効です。
個人事業主が法人化するメリット4つ
個人事業主が法人化すると、以下4つのメリットを得られます。
- 給与所得控除を受けられる
- 消費税の支払いが2年間不要
- 一定所得以上なら税金の負担が少ない
- 有限責任になる
順番に見ていきましょう。
1. 給与所得控除を受けられる
給与所得控除は、1年間の収入額に応じて差し引かれる控除です。
個人事業主の場合は、収入から経費を引いて所得税を計算します。
しかし会社員には経費を引く制度がないので、代わりに用いられるのが給与所得控除です。
給与所得控除は、個人事業主には使えない制度です。
しかし、法人化すると自分が会社の役員になるため、給与所得控除を使えるようになります。
仮に1,000万円の売上があり、400万円を経費・600万円の利益があったとしましょう。
この条件だと、個人事業主には所得税・事業税・住民税で、合わせて年間約143万円の税金が発生します。
一方法人化すると、600万円の利益を役員報酬にあてられます。
役員報酬にして給与所得控除の対象とすることで、発生する税金は個人事業主より安い約75万円です。
つまり年間で約68万円安くなるので、大幅な節税につながります。
2. 消費税の支払いが2年間不要
個人事業で年間1,000万円以上の売上が発生すると、消費税の納税義務が生まれます。
ただ、法人だと「2期前の売上が1,000万円以上」の場合に、消費税の納税義務が発生します。
新規に法人化した場合、2期前の売上は存在しません。
そのため、法人化して最初の2年間は、消費税の納税が不要になるのです。
ただ、資本金1,000万円以上で設立した法人は、課税事業者(消費税の納税が必要)となり該当しません。
節税につなげたいなら、法人を設立する資本金に注意しましょう。
3. 一定所得以上なら税金の負担が少ない
事業所得が900万円以上なら、法人の方が課せられる税金が少なくなります。
個人事業主の所得税の税率と控除額について、以下の表にまとめました。
所得額 | 税率 | 控除額 |
~195万円 | 5% | 0円 |
195万円~ 330万円 |
10% | 97,500円 |
330万円~ 695万円 |
20% | 427,500円 |
695万円~ 900万円 |
23% | 636,000円 |
900万円~ 1,800万円 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円~ 4,000万円 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円~ | 45% | 4,796,000円 |
個人事業主の税率は、上記のように所得が上がるごとに増加します。
しかし法人だと、800万円以上の所得は、すべて23.3%の税率です。
個人事業主だと、900万円までは税率が23%で、それ以降は30%を超えます。
そのため、所得が900万円を超えた場合は、法人化した方が節税につながります。
4. 有限責任になる
法人化すると、有限責任を負う立場になります。一方個人事業主の頃は、無限責任という状態でした。
有限責任と無限責任の違いは、以下の通りです。
- 有限責任:会社が倒産した際、出資額以上の金銭的負担を負わない
- 無限責任:会社が倒産した際、すべての負債を支払う責任を負う
仮に500万円の出資で株主(経営者)になった会社で、1,000万円の損失を出したとしましょう。
この場合、無限責任を負う個人事業主は、損失である1,000万円全額の支払い義務が発生します。
一方法人は有限責任なので、出資額である500万円以上の負担は求められません。
つまり、出資金を失うだけですむのです。
事業を行う以上、失敗してしまうリスクも0ではありません。
法人化していると有限責任になるので、金銭的なリスクをある程度抑えられます。
個人事業主が法人化するデメリット3つ
個人事業主が法人化することには、以下3つのデメリットもあります。
- 法人設立に20万円かかる
- 社会保険の加入が必要
- 赤字でも住民税を毎年7万円支払う
上記のデメリットも把握した上で、法人化するかを検討しましょう。
ひとつずつ詳しく解説します。
1. 法人設立に20万円かかる
法人設立には、最低でも20万円の費用がかかります。20万円の内訳は「公証人の手数料7万円」と「登録免除税15万円」です。
上記の費用に資本金を加えたお金で、法人を設立します。
個人事業主の場合は「開業届」を提出するだけでよく、費用は一切かかりませんでした。
20万円は決して安い金額ではないので、法人化するには金銭的な余裕が必要です。
2. 社会保険の加入が必要
個人事業主の場合は、社員5名以下なら社会保険への加入は任意でした。
しかし法人化すると、会社にいるのが社長(自分)だけであっても、社会保険の加入が必要です。
個人事業主のころはなかった社会保険料が発生するので、税負担が増加してしまいます。
法人化を検討するかどうかは、社会保険料による追加コストも考慮して決めましょう。
3. 赤字でも住民税を毎年7万円支払う
法人化して赤字が出てしまった場合でも、住民税7万円の支払いが発生します。
個人事業主のころは1年の利益が赤字なら所得税・住民税は発生しなかったので、法人の大きな違いといえます。
もし今後赤字の可能性があるなら、住民税が負担とならないよう法人化は見送った方がいいでしょう。
個人事業主から法人化する手続き方法
ここからは、個人事業主から法人化する手続きについて解説します。
- 法人の基本的事項を決める
- 定款の作成
- 公証人から定款認証を受ける
- 法務局で登記申請
順番に見ていきましょう。
1. 法人の基本的事項を決める
まず、設立する法人の基本的事項を決めましょう。基本的事項とは、以下の通りです。
- 会社の形態(株式会社か合同会社か)
- 商号(社名)
- 事業目的
- 本店住所
- 役員構成
- 資本金
上記を決めておくことで、法人設立の申請手続きをスムーズに行えます。
2. 定款の作成
定款とは、法人の基本的事項をまとめたものです。
作成した定款をもとに、法人登記に必要な書類を作成します。
法人登記に必要な書類は、会社の形態や役員構成によって異なります。
作成で疑問があれば、司法書士や行政書士に依頼するのもいいでしょう。
3. 公証人から定款認証を受ける
作成した定款は、公証人からの認証を受ける必要があります。
定款認証は、
- 文書にした定款を認証してもらう
- パソコンで「電子定款」を作成し、公証役場に送信する
といった方法で行えるので、自分に合った方法を選びましょう。
4. 法務局で登記申請
定款認証が終了したら、必要な書類を持参し法務局で登記申請を行いましょう。
法務局で1週間から10日ほどの審査が行われ、通過後に登記事項証明書を取得できるようになります。
個人事業主から法人化した後にやるべきこと
法人化する手続きを行ったら、それで終わりではありません。
法人化した後には、以下の手続きを行いましょう。
- 法人名義の銀行口座解説
- 税務署・都道府県事務所への書類提出
- 個人事業の廃業手続き
順番に見ていきましょう。
1. 法人名義の銀行口座開設
設立した法人名義の銀行口座を開設しましょう。
売上金の入金や売掛金の回収、経費などの支払いは、法人名義の口座で行われます。
会社名義の口座の開設には、数日から数週間かかります。
早く法人口座を使える状態にするため、設立が完了後すぐ手続きを行うのがおすすめです。
2. 税務署・都道府県税事務所への書類提出
所在地の税務署と都道府県税事務所に、各種届出を行いましょう。
提出が必要な書類は、以下のものです。
- 法人設立届出書
- 青色申告承認申請書
- 源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 登記事項証明書・定款のコピー
法人設立届出書は、設立から2ヵ月以内が提出期限なので、遅れないよう注意しましょう。
3. 個人事業の廃業手続き
法人化するためには、それまで行っていた個人事業を廃止する必要があります。
所轄の税務署に廃業届を提出し、個人事業の廃業手続きを進めましょう。
個人事業の廃業は、開業時と同じ書類で行えます。
個人事業主からの法人化に関するよくある質問・疑問
ここまでに解説した内容以外にも、法人化に関する疑問はさまざまです。
そこでここからは、個人事業主からの法人化に関するよくある質問・疑問について答えていきます。
- 個人事業主の特に受けた助成金はどうなる?
- 個人事業と法人を掛け持ちしてもいい?
順番に見ていきましょう。
1. 個人事業主の時に受けた助成金はどうなる?
助成金は、融資と異なり返済する必要がないお金です。
そのため、法人化によって返還したり、受給対象でなくなったりということはありません。
法人化すると創業系の助成金は受給が難しいですが「均衡待遇・正社員化推進奨励金」や「若年者等正規雇用化特別助成金」なら、利用できる可能性があります。
必要に応じて、助成金も活用してみるといいでしょう。
2. 個人事業主と法人を掛け持ちしてもいい?
個人事業と法人を掛け持ちして経営することは、特に問題ありません。
両方を掛け持ちする場合は「マイクロ法人」という扱いになります。
マイクロ法人を設立することで会社員の立場になるので、公的保険が健康保険と厚生年金に切り替わり節税効果があります。
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